Monday 8 February 2010

8.仏教圏へもう一度

 アチナタン村の朝はアザーンと鳥の鳴き声で目を覚ます。この音を聞くとムスリム圏にやっと来たなと感じる。僕らはマスジド近くにある、生活用の流水で顔を洗い、歯を磨く。そこには食器を洗いに来た、たくさんの女性たちがいた。
「どこから来たの?」
「日本からです。」
「めずらしいね。ここはみんな通り過ぎてダー・ハヌーに向かうか、手前の仏教徒の村々なんかを回ったりする人が多く。こんな村には誰も立ち寄らないんだよ。」
「僕はムスリムの村々を回ってるんです。」
「嬉しい事言ういうじゃない。ちょっとまってよ。」
 そうゆうと袋からバナナを一本取り出した。僕はそれを受け取ると、塩を頂きバナナに付けて食べた。バナナに塩を付けて食べるのは初めてだったが、なかなかいけた。

Achinathang masjid

アチナタン村のマスジド。
初めてのムスリムの村。
白とグリーンの色彩が渓谷沿いの山肌に溶け込んでいる。
アザーンの声は神聖で心地よく不思議な感じ。
学校へ行き交う子供たちに声をかけた。
”アサラーマ・レーコン”
すると声が帰ってくる。
”レーコン・アサラーム”
そうここはムスリムの村なのだ。


「ホンジョ、今日は昨日早足で通り過ぎた村々を回るぞ。」
「えっ、また引き返すの?」
「時間はたっぷりあるんだ。その後にチクタン村に向かう。」
 ま、時間はたっぷりあるわけで、僕もジミーの案に納得した。さっそく僕らは車のバックシートを直し、アチナタン村を後にした。

Achinathang village

アチナタン村のメインストリート。
早すぎる朝。商店はまだ開いていない。
目の前にドライマウンテンの岩肌が見える。
気持ちいい木漏れ日の中、眠気まなこをこすりつつ。
アザーンの声の中、向こうとこちらを行ったり来たり。
夢はまだ続く。


 とにかく僕らは昨日来た道を引き返した。脇目もふらず引き返した。タクマチク村からスタートする。なぜ昨日も行ったタクマチク村なのかというと、単にジミーが戻り過ぎてしまったのだ。そこに哲学的な深い意味はまったくない。橋を渡りタクマチク村に入っていく。朝だという事で子供たちはみんな学校に行っていて、村は静かだった。ゴンパの回りを一周していると、一人の女の子がやって来て中を見せてくれると言う。ごつい南京錠で施錠している扉を開けて中に入った。僕らは、ひととおり中を見てまた外に出る。そして目の前に広がるタクマチク村から見下ろす景色をみて感嘆の声をあげた。

Tagmachig village

タクマチク・ゴンパ。
ゴンパは下界を見下ろす。
村人を見守る。
子供たちを見守る。
そしてたまにやってくる、
旅行客を見守る。
けしてよけいな事は言わない。
そばにそっとその気配を感じるだけでいいのだ。
あなたは山であり、風であり、記憶なのだ。


Tagmachig village

今日もマニ車を回す。
奥から手前へそれを左側にして、
一つ一つ回して行く。
一つ回すと一つ得が体の中に転がってくる。
二つ回すと二つ得が体の中に転がってくる。
三つ回すと三つ得が体の中に転がってくる。
今日はいいことがありそうな気がする。


Tagmachig village

タクマチク村から。
見下ろすその景色に飲み込まれそうになる。
”こんな景色どこにでもあるぜ”
なんて斜に構えると、
たちどころに心が折れてしまう。
そうして今日も旅人が一人圧倒的な景色に飲み込まれて行く。


 ゴンパの裏手に行くと遠くから子供たちの声が聞こえた。僕らはその声のする方へ歩き出し、小学校の前で立ち止まる。校庭から子供たちが手を振っている。僕らも彼らに手を振る。それから
僕らはタクマチク村を後にした。

Tagmachig village

タクマチク村の小学校。
子供たちが校庭に集まっていた。
一人一人眼を輝かせて、見るもの聞くもの、
手のひらからこぼれ落ちないようにがんばる。
そう君たちはこの村の宝なのだ。
君たちはこの地球の宝なのだ。


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