Thursday 4 February 2010

4.ジミーの事情とか計画とか

bread

さて朝食。
パンとヨーグルト。
焼き色パンにはバターと蜂蜜。
ヨーグルトには粗目砂糖。
朝8時。
窓から朝日が差し込んでいる。


「なんだって?」
「ジェットエアを首になった。」
ジミーはそう言うとパンを口の中に放り込んだ。ゆっくり咀嚼してぐるぐる茶を流し込む。
「3ヶ月前の雪が降る寒い日だったなぁ。俺がジェットエアの車に乗り込んでさ。」
ジェットエアとはインドの老舗航空会社で、ジミーはレーの飛行場にて車で飛行機まで乗客を運ぶ仕事についていた。
「そして、エンジンをかけようとしたんだ・・。」

 2月の寒い日、風が強く雪が激しく吹き付けていた。ジミーは滑走路の端に止めてあったジェットエアのマークが入った車を移動しようとしていた。車に乗り込みキーを差し込み、そしてそれを回した。
”かちかち”
 なにか音はするがエンジンがかからない。もう一度回す。かからない。ジミーは何度も繰り返した。5分もすると飽きて来て、手持ちのライターでタバコに火をつけて外に出た。ボンネットを開けて様子を見たがさっぱり原因がわからない。火花が飛んでないようだ。そこでジミーは何を思ったのかライターでプラグ付近を炙ってみた。するとそこから火が一気に燃え広がったのだ。ジミーは驚いて飛び退いたが、あまりにも燃え広がる火の勢いが強かったので、いろんなことを考えるのを放棄した。それとその日はとても寒かったので、その火で暖をとることにした。ジミーは燃え上がる車を見ながら、もう一本タバコに火をつけて、”車の焚き火は温まるなぁ”とぽつり、ひとりごちたのと同時に、煙が目にしみて泣いていた。その日ジミーはジェットエアを首になった。

「パーミットを取って来たよ。これでどこにでもいける」

ILP

インナーラインパーミット。
こんな紙切れ一枚が力を発揮する。
ヌブラとかパンゴン・ツォとか。
モリリとかダー・ハヌーとか。
いろいろ行ける、魔法の紙切れ。
でも僕はもっと先へ行きたいのだ。
その先には何があるのだろう。


 ジミーといろいろ話をした。僕がダー・ハヌー地区のその先にある外国人非許可地区に行けるかどうか、話をした。インド軍のチェックポストが無数にあり、それを全部クリアできるかどうか。僕の答えは”無理”。だがジミーの答えは”可能”だった。だがそこにはなんの根拠もない。チェックポストのその先にあるムスリムの村、チクタン村を目指すのだ。チクタン村はジミーの奥さんクルスンの出身地だ。クルスンの妹のラジーが今もそこで両親と暮らしている。クルスンの話によると、未だかつてそこは外国人が足を踏み入れた事がないらしい。外国人はそこに入る事を許可されていないからだ。
 「さっそく出発だ。」
 こうして僕らの風変わりな旅は始まった。

srinagar road

この道の向こうの遥か先にはいったい何があるのだろう。
何かを見てみたいと思った。
何かを感じてみたいと思った。
何かを触ってみたいと思った。
何かを聞いてみたいと思った。
きっと遥か先にあるものがわかったら、
もっともっとその遥か先を知りたくなるのだろう。


0 comments:

Post a Comment

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...