Thursday 11 February 2010

11.サンジャク村のチェックポスト

 僕らは分岐にさしかかる。それをまっすぐ行くとダー村の方へ、左に曲がり鉄橋を渡って、しばらく行くとチクタン村にたどり着く。僕らは迷わず鉄橋を渡った。鉄橋を渡るとすぐサンジャク村に入るのだが、その手前にインド軍の鉄壁のクローズドバーが設置してあるチェックポストがある。僕らはクローズドバーの手前に車を止めてチェックポストの詰め所に入って行く。

 端的に言うと、ここから向こうは外国人観光客立入り禁止の世界なのだ。 

 僕とジミーは机に座って軍人と対峙する。僕ら二人は心なしか少し緊張していた。ここを通るべく僕らの立場と目的を説明し始めた。僕が日本人である事。僕とジミーは友達である事。ジミーの妻の実家がチクタン村にある事など。僕らはしどろもどろになりながら、話の方向性もあっちに行ったり、こっちに来たりして定まらず、実に要領を経ない話をたどたどしく話した。軍人は腕を組んでだまって聞いていたが、しばらくすると立ち上がり、どこかに確認の連絡を入れ始めた。軍人はまた僕らの前に座り、腕を組んで僕らの話の続きを聞く。軍人は僕らの話を突然止めた。
「オーケー、ストップだ。君たちが言いたいのは、日本人の君とジミー君は友達で、ジミー君の奥さんの実家であるチクタン村に、観光客としてではなく、友達として招待したいと、そういう事だな。」
 僕とジミーは顔を見合わせると、声をそろえて
「その通りです。」
と言った。
 軍人は椅子から立ち上がり僕に握手を求めた。僕がその手を握りかえすと、軍人は満面の笑みをたたえて
「ようこそシャカール・チクタンエリアへ。私たちは君を歓迎する。ただし一日だけの滞在許可とする。日が沈むまでにここに戻ってくるように。」
 僕は大きくうなずいて、パスポートを軍人に預けた。パスポートはまたここに戻って来た時に受け取る事となった。

 僕らはチェックポストを抜けてサンジャク村に入って行った。緊張がとれて楽になった僕らは空腹だった。食堂を探す事にした。

Sanjak village


サンジャク村の食堂。
この時僕らはただただお腹がすいていた。
なんでもいいから腹に入れたいと思った。
ここには何があるのだろう。
いろんな食べ物を想像する。
ここはひとけがないサンジャク村の食堂。


 食堂に入るとジミーは
「誰かいませんかー?」僕もその後に続いて「誰かいませんかー?」
ジミーは厨房に歩いて行く。

Sanjak village

誰もいない静かな食堂。
店員はどこに行ったのか。
きっと散歩でもしているのだろう。
自由気ままな店員に自由気ままな僕たち。


「勝手に入りますよー?」僕もその後に続いて「勝手に入りますよー?」
「勝手に作りますよー?」僕もその後に続いて「勝手に作りますよー?」
僕らは食堂の厨房に入り勝手に料理を作り始めたのだった。

Sanjak village

まずはブラックティー。
お湯を沸騰させる。
お茶っ葉をいれる。
いい匂いがしてきたよ。


Sanjak village

ブラックティーの完成だ。
僕とジミーは乾いたのどをそれで潤した。
まだ腹は減っている。
次は料理だ。


 僕らが料理を作っていると食堂の窓に村人たちが集まって来た。
「外人が料理作ってるよ。」
「どんな料理ができるか見物だな。」
「そうだな。」
 なんて言ってるのだろうか。店の外には人だかりができて、僕の料理の仕方をおしあいへしあいし、眺めている。

Sanjak village

ヌードル サンジャクスペシャル。
まずお湯を沸騰させ、
その間にそこらへんに転がっていた野菜を切って
下ごしらえ。
お湯が沸騰したら麺をぶち込む。
そして野菜を入れて、
調味料はそこらへんにあるのを
一つ一つ手で味見をして、
使えそうなものをぶち込む。


Sanjak village

ヌードル サンジャクスペシャルの完成。
一口食べる。
不思議で珍妙な味だが悪くない。
となりのジミーを見る。
顔をしかめて胃袋にかっこんでいる。


 ヌードル・サンジャクスペシャルを食べ終わると、料理を見学していた村人の中から店員が出て来たので、僕らはお金を払おうとした。店員は「いらない、いらない」なんて言うから、僕らは顔を見合わせてつい嬉しくなり、店員の手のひらを強引にひらかせ、お金をつかませ強引に閉じさせた。店員は申し訳なさそうに笑っていた。

Sanjak village

カシミリアンスタイルの青年。
ここはムスリム圏。
これからなにが始まるのか。
これからなにが起こるのか。
興味がつきない。


 僕らはサンジャク村を後にした。

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