満月の光が怪しく漂う雲とストク全体を照らしていたポーヤデイ(フルムーン・デイ)のあくる朝、にゃむしゃんの館でとあるワークショップが行われた。それは氷河による災害に関するワークショップで新潟大学の教授、奈良間氏による監修の元で開かれた。彼は教授というよりも登山家のアスリート然とした風貌の持ち主で、中央アジアを中心とした様々な山の氷河湖を調査しており、とても熱く山について語る横顔はまさしく山の男そのものであった。
ワークショップの参加者が集まると、まず始めに奈良間氏はヒマラヤ・レンジ全体の氷河の状況について語り始める。
「ネパールやブータンの氷河は大きく減っています。それとは対照的にカラコラム山脈の氷河は増えています。ここラダックはと言うと氷河が少しづつ減っていっています。」
そして教授は続ける。
「ラダックの1965年と2010年の氷河の大きさを比べると、天候の変化の影響で小さくなってきており、氷河の縁に小さな湖がいくつも出来てきています。」
「中央ラダックに氷河の数は237個、ヌブラには159個、ストクには6個、ザンスカールには73個で、ラダック全体の氷河湖の数は475個に及びます。」