Thursday 11 March 2010

36.チクタン村最後の朝

 チクタン村最後の朝もアザーンの声で目を覚ます。僕とジミーは洗顔をした後に、朝食を食べる。ジミーがチャパティをちぎりながら言う。
「今日、ラジーのお兄さんのクシムがチクタン村に帰ってくるみたいだぞ。」
 僕はラジーの兄のサダには会った事があるが、クシムにはまだ会った事が無かった。
「クシムは、どんな感じの人?」
「イスラムの教えを完璧に守り通している、すごくストイックな人。ちょっと扱いにくいかも。」
「そうか。」
 僕はそう一言だけいうとチャパティにスクランブルエッグを巻き始めた。

Chiktan village

チャパティー。
スクランブルエッグ。
ミルクティー。
チクタン村最後の朝食。
なんだかすごく感慨深い。
朝食を食べながら、
いろいろな思い出がよみがえって来る。
なんだか寂しいな。


 僕とジミーは朝の散歩に出かける事にした。

Chiktan village

窓からの光に浮き上がるラジーの靴。
家から外に出ようとした時。
窓から光が差し込む。
その光はラジーの靴を包み込む。
チクタン村のやさしい光は、
チクタン村のやさしい人々を象徴してる気がした。


 僕たちはラジーの家を出ると二頭の散歩から戻ってきた牛とすれ違った。

Chiktan village

散歩から戻ってきた牛。
こんな光景も今日で最後なのだ。
ゆるく流れる空気と時間の中、
僕はまだ夢心地。


 僕たちはチクタン川を少しだけ遡上する。前方にタリンタン山が見える。この山の頂上にはある木が立っている。その木はチクタン村にとっては大切な二本の木だ。伝説の木。昔々、まだイスラム教がここに入って来る前から村人に崇拝されていた木なのだ。ここから片道三時間、往復で六時間かかる。僕はそこにいつか行ってみようと思った。チクタンエリアはまだまだ謎が多い。歴史についても簡単な資料しか残っていないのだ。スカルドゥからやってきた、ラジ・ハリと言われているチクタン城の王様の話など、興味深い歴史がたくさん眠っていそうだ。

Chiktan village

チクタン川の上流付近。
昔々からずっとチクタン村に
流れていた川。
今も変わらずその時の流れのままで
たおやかに流れている。


 僕たちはチクタン村の家々の間を抜けて、小高い裏山に登る。

Chiktan village

チクタン村の家。

 ラカンウォールの横を通り過ぎ山に登っていく。そこからはチクタンエリアが一望でき素晴らしかった。チクタン村は人口500人、家の数は44件の小さな村だ。目の前に豊かな畑が広がっており、畑の向こうにはチクタンエリアの村々が広がっている。

Chiktan village

丘の上からのチクタンエリアの眺め。

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