Saturday 21 May 2011

26.岩絵のフォッサ村。

 自転車でサンジャク村に向かう。シャカルドゥまでは知った道なので順調に進んだ。シャカルドゥを過ぎると道は一気に標高を下げていくと去年の洪水に耐えられなかった道は無惨にもぼろぼろになっている。右側は岩山で左側が切り立った崖という地形が続いており標高が下がる事に反比例して気温はどんどん上がっていく。

 途中までアプリコットの花が道に沿って咲いており標高が下がっていくいくにつれてアプリコットの花が散ってしまって青々とした葉に覆われている木が多くなるのだが、またその新緑も初夏の太陽の元で今年の輝きを放っていた。

 いくつかの小さな村々を通過して、20キロ近い山道の旅も終わりに近づくと、カンジ・ナラは大いなるインダス川に堰を切ったように勢い良く注ぎ込む。そのT字の形の注ぎ込み口の縁にサンジャク村はへばりつくように長く高くそして青々と広がっていた。

ladakh






 今、僕の手元に外国人観光客から頂いた一枚の手紙がある。それを翻訳、抜粋して紹介する事にする。

「2009年7月21日に私は3人の友人とともに旅行をしました。レーにてInternational Association of Ladakh Studies協会と話をした後、 私たちはレーからカルギルまで旅をしました。カルギルでインナー・ライン・パーミットを取った後、サンジャク発のトレッキングを開始しました。カンジ・ナラに沿って歩き、しばらくするとカンジ・ナラと道の間に看板を見つけました。それにはーPROTECTED MONUMENTS SKINBRISSAーと書かれていて、その看板は大きな岩がごろごろしている中に立っており、6世紀から8世紀の間に描かれた岩絵があると書いてありました。しかし岩はごろごろあるのに岩絵が見当たりません。岩のほとんどは大きく割れており、その中には人為的に表面が削り取られたり、割られたりして、石積みの材料にも使われたのだろうと判断できる破片も沢山転がっておりました。看板によると、戦いやハンティングの生活の姿(弓と矢と長い槍を持って馬に乗っている姿)、そして動物たちの姿、人間たちの姿が描かれていると書かれているのに何ひとつ発見できませんでした。これらの岩絵の破壊はラダックの重大な損失です。これらの姿は一番始めにこのエリアに住み着いた開拓者たちの足跡になるものなのです。これらの岩絵の破壊は私たちが生活している文化の損失よりも遥かに大きいのです。私たちはこの大きな世界の中よりラダックという文化の違う地域(それは大いなる尊敬の印です)に引き寄せられて訪れる観光客は数知れません。もし私たちの母なる大地の中でそのような事が起こったらどうするか?その答えはひとつでしょう。・・・」

 僕はこの手紙を読んでサンジャクでの岩絵の調査に入ったのだった。結論から言うと半ば失敗で半ば成功というところだ。まず半ば失敗の話からしようと思う。このPROTECTED MONUMENTS SKINBRISSAと書かれた看板は見つかったのだが、岩絵は去年の洪水の影響もあり、らしきものひとつを覗き全く見つからなかった。

 2時間ほど探しまわったのだがダメでした。そのらしきものも古そうな岩のひとつに絵のような物が彫り込んであるというだけでそれが本当に岩絵なのか、なんの確証はない。

 次に半ば成功の話を、サンジャク村外れの発電所近くにあるバス停付近より金網に沿って山中に入っていき、インダス川の上流に向かって一時間ほど進んでいくとフォッサ村という小さな小さな村があるのだが、その途中に広い緑の土地が広がっており、その土地全体に岩が密集しつつ点在しているのが見つかった。

 しかも驚く事にほとんど全ての岩々に岩絵が描かれていたのだ。古い岩たちに白い線で描かれた絵たちはすぐにでも動き出しそうな、不思議な小人たちの世界を創造していた。

 この多くの岩たちから聞こえ出す小人たちの協奏曲は、1000年以上も昔から観客のいない中鳴り続けていたのだろうと思うと、こうして一人だけの観客になった今、ひざを抱えてこの協奏曲を聞いているとずいぶん贅沢な事だなと考えてしまう。

 そしてこれだけ大規模な岩絵が手つかずでしかも、どの文献、観光ガイドブックにも載っていないのは驚きだった。まさに大発見だった。岩絵の調査が終わりフォッサ村に入っていく。

 この村の入り口にFussa Zinという直径10メートルほどの泉があり、この泉に注ぎ込む水がまさに妖精が運んで来たような奇跡の味なのだ。

 一口含むとその水は口の中に広がりつつ溶けていき、気づかなければそのまますっきりと喉を通過してしまうような微かな甘い香りが瞬いており、木々の間を通り抜けて山脈から注ぎ出ずる、インダス川に向かいつつあるきらりと光るその一滴はまさに今まで味わった事のない知られざる名水なのだ。

 この密かなる中にある岩絵と名水は僕にとってラダックからの素敵な贈り物となった。


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SKINBRISA in Sanjak

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SKINBRISA in Sanjak

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SKINBRISA in Fussa Village

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SKINBRISA in Fussa Village


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SKINBRISA in Fussa Village


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SKINBRISA in Fussa Village

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SKINBRISA in Fussa Village

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SKINBRISA in Fussa Village

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