2011年5月10日火曜日

19.秘密基地。

 僕の名前はメヒディ。僕の家には日本人が住んでいて、今日その日本人は僕の家の庭にテントを作ったんだ。僕がチクタン村で良くみるでっかくて骨太の灰色をしたテントとは違い、そのテントは小さいけど丈夫そうで、黄色がやけに眩しくて、なんか楽しそうなんだ。

 そして僕は学校が終わると部屋に鞄を投げ入れさっそくあの黄色いテントに向かった。テントのジッパーを下げるとまた中から白いテントが出てきた。どうやらこれが本丸のようだ。表の黄色いテントは屋根のようなものだ。中の白いテントのジッパーを下げると
 
 「!!!」 

 おー以外と中は広いし暖かい。

 僕はおそるおそるテントの中に入ってみる。中からいろいろ触ってみる。ドンキーが近くを通るとその影が見える。鳥が上空を横切るとその影が見える。僕は学校から戻ってきた妹たちを招く。テントの中は妹たち5人も入ると一杯になってしまう。テントの中で妹たちと歌を歌った。

 妹たちが知ってる曲の数はたかが知れているが、でも何度も何度も歌った。こんなに楽しいのは学校の遠足以来かな。妹たちの調子外れの歌がまた笑いをさそう。

ladakh



 その時、テントの外で数人の人影を感じた。そして話し声が聞こえた。その声は聞き覚えのある声だった。ディックの声だ。ディックは頭はからっぽなのに腕っ節は強く学校一の暴れん坊で僕は苦手としている。僕はテントから顔をのぞかせる。

「おい、俺たちにもそのテント貸してくれよ。」

「ダメだよ。このテントは日本人のなんだから。」

「いいじゃないかよ。おまえたちだけで楽しみやがって。」

 なんて言いあってるうちに僕と妹たちはあっと言う間にテントから引きずりだされた。僕は家に逃げ込むとタップの前に姉がいた。

「あんた、また逃げ帰ってきたの。それでも男なの。本当にだらしないわね。」

「そんな事いっても、無理だよ。腕っ節が違い過ぎる。」

「なら頭を使いなさい。頭を。」

ladakh



 という事で僕は頭を使う事にした。テントが敷かれてる場所はもとはというと畑だったところで今は休耕地だ。そしてそこは一段高くなっており段々畑状になっている。水が上の畑から下の畑へ流れるようになっている。そこで僕はいい事を思いついた。さっそく実行に移してみる。

 まずはテントが張ってある場所の下手にやつらに見つからないように移動する。そこには水がうえからだんだんと流れてきた時に下に受け流す溝が作ってある。僕はその溝を石で念入りにせき止めた。そしてチュルングス川の上流に引き込み溝があるのだが、今は石でその溝に水が入ってこないようにせき止めてある。

 僕はその溝の石を丁寧かつ豪快に蹴り崩した。そうする堰を切った水が豪快に溝に流れ込んで来る。僕はその様子を家に戻り部屋の窓から様子を見る事となった。水は一番上の畑から順番に勢い良く降りて来る。5段目、4段目、3段目、2段目、そしてとうとうテントのある1段目にたどり着いた。

 一段目の下手まで一気に水が溝を伝って流れてから、溝の一番端は石で塞いであるので、行き場を失った水は一気に逆流して来る。徐々に水かさが増えていき、怒濤の勢いでテントに近づいている。そして水が一気にテントを飲み込むと、中から叫び声が聞こえ、ずぶ濡れになったディック一味が這い出てきた。

 ディックたちは溺れて岸に上がってきた犬のように頭と体をぶるんと1回震えると、不思議そうに周りを眺めてから、事情にが掴めたのか退散していった。テントは濡れてしまったけど、乾かせばまた使えるし、ディック一味も追い出せたので、僕は部屋の中でしたり顔で悦に入った。そしてディックはそのテントに2度と近づかなかった。

 そして僕ら兄妹は学校帰りに遊んでいる。うららかな春の中、チクタン村の小さな秘密基地で今日もまた。

ladakh


ladakh


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