12.再び、ダマスカス旧市街を歩く。

　ラタキアを出発してから数時間、昼頃にダマスカスに到着する。ガラージュからタクシーに乗ってヒジャーズ駅の前で降りて、郵便局に行き、日本にいらない荷物を送った。寝袋だ。これが使わないのにかさばり続け疲労困憊の最大の原因になっていたのだ。いつ日本に届くだろうか？

　ヒジャーズ駅は1917年のオスマン帝国時代に完成した。当初はイスラム第二の聖地、サウジアラビアのメディナまで鉄道は敷設されていた。第一次世界大戦でその路線のほとんどは破壊されてついには廃線になってしまったのだ。

　ホテルにチェックインをすませてから、午後よりもう一度、旧市街を散策する。

　旧市街の城塞。現在建っている城塞は西暦1100年前後に建てられたものだと言われている。城塞は現在は本屋が入ったり、キオスクがあったりする。そして夏の間、夕方からはジャズ、クラッシック、ロックなどのコンサート会場として使われたりしている。ちなみに2010年7月にはこの城塞で大規模なフェスがあり、ゴリラズ、ボビー・ウーマック、デ・ラ・ソウル、ザ・クラッシュ（ポール・シムノン、ミック・ジョーンズ）、ハッピー・マンデイズなどそうそうたるアーティストがこのダマスカスに集結した。
　ちなみにゴリラズのダマスカス・ライブはこちらのサイトで全模様をストリーミングで聞く事ができる。
http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=128846005

　伝統的スタイルでジュースを売る人。

　サラディーン像。サラーフ・アッディーンはイスラムの世界では英雄なのだ。彼は西暦1138年にクルド人の子として生まれて、西暦1169年よりアイユーブ朝の君主となる。彼の一番の歴史的功績はエルサレムを十字軍から奪回した事だ。彼が人々に愛されている理由がもう一つあり、人としてもすばらしかったらしい。捕虜は誰一人殺さず、遠征途中の村々には、遠征費の一部を寄付していったのである。そんな話も相まってサラディーンは人々から愛されるようになったのである。

　ウマイヤド・モスクの入り口前の古いアーチ。

　ウマイヤド・モスク。

　旧市街の路地。オールド・ダマスカスには至る所に迷路のごとく路地が張り巡らされている。入り込むとなかなか脱出するのが難しいのだ。もちろん僕はこの路地の巣に入り込んでしまい、何度も迷子になる。

　真っすぐな道にあるモスク。

　ローマン・アーチ。

　真っすぐな道。（Straight ST）僕の宿もこの通りにあり、旧市街地のど真ん中なので行動がし易かった。サウロがキリスト教徒逮捕のためにダマスカスに向かい、その近くで失明をした時に出会ったアナニアの家がこの道にあったとされている。後にサウロはアナニアに改宗を諭されて、パウロと改名している。ダマスカスはイスラム教の聖地であると同時にキリスト教の聖地でもあるのだ。しかもここでは二つの宗教は共存している。

　モスク。僕は旧市街のキリスト教区に入っていく。

　教会。

　教会。

　教会。

　路地の奥まったところにひっそりとモスクがあった。

　僕はホテルに戻ると、JICAの人と連絡をとった。そして夜に食事をする事になった。夜８時過ぎに旧市街でタクシーを拾い、日本大使館に向かう。そこで落ち合ってレストランに向かう。

　JICAの人とシリア料理のレストランに入っていく。ぼくは何を頼んだらよいか全く分からなかったので、彼女がいろいろ注文してくれた。彼女はダマスカスにJICAで就任してきてまもないらしい。彼女は器械体操の先生だ。苦労話をたくさん聞いた。就任そうそう来るなんて言う話は聞いていないと言われたり、レオタードのような服はイスラム的にはダメらしいので、子供たちは7,8才くらいでやめさせられるらしいとか、時間通りにこないシリア人スタッフの話とか、本当に大変そうだった。食事を終えると僕は彼女と別れて、ホテルに戻った。