Monday 18 October 2010

5.スズキタカシとお墓。

 パルミラの記念門でスズキタカシに捕まった。

 スズキタカシとはシリア人で、このパルミラを営業のテリトリーとしている日本人の間では有名なタクシードライバーなのである。スズキタカシと言っても彼はまったく日本語が話せない。8年前に日本人にこの名前を貰って(教えてもらって)今はタクシーのダッシュボードの上に”スズキタカシ”と書かれたボードを正面からよく見えるように置いている。数年前に中田英寿がシリアを放浪した時、スズキタカシにガイドをしてもらって日本での名声に火がついたのだ。
「お墓行くよ。古いお墓。3000でどう?」
「高い、高すぎる。」
「いくらならいい?」
「ベドウィン・ツアー付きで300。」
「だめね。そんなお金ではどこも行けないね。」
「僕は貧乏なんだ。さっきあそこにみえる子供たちに全財産を寄付したばかりさ。」
「じゃ、2000でどう。」
「そんなに高いんじゃ歩いて行った方がいいなぁ。」
 僕は歩き始める。
 スズキタカシは僕に並走しながら、
「じゃ1500でどう。」
 僕は無視して歩き始める。
 スズキタカシは僕の前に回り込むと
「1000。」
 と言って、車のドアを開ける。
「じゃお墓とベドウィン・ツアー付きで1000だ。」
 そう言うと、僕はスズキタカシのタクシーに乗り込んだ。

Lot of tomb




 パルミラの市街地でお墓のお墓の入場券を買い、ドライマウンテンの中を進んで行く。20分ほど進むと丘陵地帯に背が高いお墓が点在している。

Old tomb and camel


 エンリコ家の塔墓の横を通り過ぎ、500メートルほど進むんだ。そこには巨大なお墓があった。その墓はエラベール家の塔墓と言い、4階建ての石を積み上げてできている建造物で、300の石棺が入る事が可能だと言われている。紀元103年に作られた大変古いものだ。

Tomb,Parent and child


タクシーを降り、僕は中に入って行く。このお墓はすごく人気が高く、中には観光客がひしめいていたので、僕は早々に退散した。外に出て墓を改めて見ると本当にでかい。墓の前ではベドウィンの親子がカフィーヤを売っていた。
「カフィーヤあるよ。いい生地だよ。触ってみて。」
 子供が僕の服の裾を掴んで言う。僕はバックパックの後ろをにくくりつけてあるカフィーヤを指して、
「ごめんなパルミラでもう買っちゃったんだ。」
 そう言うと、子供は一瞬残念な顔をしたが、すぐにリセットして新しいお客の裾を掴み始めた。

Hypogeum of the three brothers


 僕はタクシーに乗り込み次のお墓に行った。三兄弟の地下墓室だ。紀元100年前後にお金持ちの三兄弟によって作られた墓だ。地上に長方形の大きな穴が空いていてそこから地下に階段が続いている。地下に入って行くとそこも人であふれていた。突き当たりの壁画には人が近づけないように柵がある。その壁画にはかすかに残る淡い彩色で絵が描かれてあった。人ごみを嫌って僕はすぐに地上に出てきた。

2 comments:

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    日本の名前、結構使われているみたいですね。
    シリアの風土人々への思いが蘇ります。
    また、行きたいものです。

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  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    miriyunさん。
    コメントありがとうございます。
    リンク先のウマイヤド・モスク、すばらしいですね。
    本当にウェルカムで開放的なモスクでした。
    シリア自体が観光客にとっては非常に開放的でしたよ。

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