Tuesday 19 October 2010

6.スズキタカシとベドウィン

 僕がスズキタカシの車に乗り込むと、砂漠地帯の中を走り始める。30分ほど走っただろうか、肉眼で確認できうる距離に砂漠の上、数張りのテントが見えてきた。
 「あれがお邪魔するベドウィン・キャンプ。」
 スズキタカシはそう言うと車のアクセルを深く踏み込む。タクシーは砂埃を巻き上げながら数分疾走してベドウィン・キャンプの前に止まった。
 僕たちはキャンプの主人にテントの中に通された。砂漠の気温は40度は軽く超えていたが、テントの中は風通しがよく思いのほか涼しかった。

Bedwin and Takashi Suzuki




  右側がスズキタカシさんです。

 伝統的な生活スタイルで過ごしているベドウィンは今は非常に少なく、定住している人たちや牧畜意外の方法でお金を稼いでいる人たちが多くなっている。その要因はいろいろあって、干ばつの年に生活が苦しくなり、遊牧生活を捨てるベドウィンが多くなった事、観光客がたくさん流入してくるようになり観光客相手のビジネスに移行するベドウィンが多くなった事。シリアの砂漠地帯ははイラクとも国境を構えており、隣国の紛争状態の中、国境の沿いの治安が悪くなり、自由に遊牧が出来る範囲が狭くなってきた事などさまざまである。完全にベドウィンのスタイルを捨てずに兼業のようにして文化を維持していく人たちもかなりいて、勇敢で、素晴らしい文化である事を部族単位で細々ながら受け継いできて、未来の子供たちに次々伝えて行き、その誇り高いベドウィン文化は今日まで維持されてきたのだ。

Red tea


 僕はシャイ(レッド・ティー)を頂いた。シャイは凄く甘い。砂糖をこれでもかと言うほど入れて、お茶っ葉をやかんの熱いお湯でこして行く、甘さと葉っぱの量は入れる人の経験で絶妙な味加減が決まる。甘いのだけれども、これ以下の甘みでも、これ以上の甘みでも、またこれこれ以上の濃い紅茶でも、これ以下の薄い紅茶でも、絶妙なバランスの味加減は維持できないのだ。それとこの砂漠の熱さがシャイのうまさに花を添え、よりいっそうのうまみを感じさせるのだ。飲み干すとどんどん次がれて行く。

Inside Bedwin  Tent


 テントの中は風通しがいい。昔と生活様式もかわり、ラクダだけではなくバイクも乗ったりする。また写真の支柱を見ていただいてもお分かりのように、テントは簡単に組み立てたり、分解できたりして、いつでも移動可能な状態だ(最近は定住するベドウィンも多くなったが)。テントの生地はラクダや山羊の毛織りの頑丈な素材で出来ている。

Bedwin Parent and child


 ベドウィンの親子。テントの中にテレビがあります。バッテリーで自家発電です。

Bedwin Tent

 
 ベドウィンのテント。

Bedwin Children


 ベドウィンの兄弟。

Bedwin grand mother


 ベドウィンのおばあさん。あごに入れ墨が入れられている。年配のベドウィンの女性はあごに入れ墨を入れている人が多い。昔、美しさの象徴の一つで、あごに入れ墨をいれたのだそうだ。そこで僕は一つ思い出した事がある。北インドのムスリム圏に滞在していた時の事、ムスリムの入れ墨は禁止されていると言う事で、その代わりに女性はヘンナと言う染料で繊細な柄を手や足に描き、一定の時間が経ってからその染料を落とすと、入れ墨のようなうつくしい柄が浮かび上がるというのを見た事があり、彼女はヘンナは聖なる素敵な力を持っていると言っていたのを思い出した。でも入れ墨がイスラムで本当に禁止されているものかどうかは、僕にはわからない。

Bread and poteto


 僕はおばあさんに、ホブスにポテトを巻いたものをごちそうしてもらった。ポテトの甘みとホブスの食感が少し空腹気味だった僕の胃袋をみたしてくれた。

 ベドウィンの文化は僕にとっても非常に興味深かった。世界中で遊牧民的生活をしている民族はたくさんいる。その中でもベドウィンという誇り高い部族とふれあい、いろいろな事を感じる事ができて、本当によかったと思っている。中央アジアの遊牧民、遊牧民ではないがジプシーと言われる流浪の民族など居住場所を変えながら生活している民族は、僕たち日本人のような元来、古来にすでに狩猟生活スタイルを捨て、農耕型定住生活に移動した民族から見るととても新鮮で、まったく違う文化の一端を垣間みれたような気がした。

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