2011年4月25日月曜日

12.チクタン村の農作業とプラタンの話。

 チクタン村の農作業の季節が今日一斉に始まった。まさに毎日眠たい目をこすり続けていた村が、冷たい水で顔を洗うがのごとく目を覚ましたのだ。農作業が始まる前日より自分の農地を見に行く人がいたりと、みんななんだかそわそわしている。そしてとうとう朝が来た。

 家族総出で始まる農作業は、一年で一番忙しい行事のひとつだ。まず始めに肥料土を農地にまいて行くのだが、これがまた大変な作業だ。肥料土をスコップで女性が背負っているツェポといわれるかごの中に入れて行くのだが、背負う方も入れる方も大変な作業なのだ。

 女性は満杯になったかごを背負って農地まで歩いて行き、乾燥している土地の上に肥料土を落として行く。一回土を落とすと小山が農地の上に一つできる。この小山が縦横に碁盤の目ではなく碁盤の碁のように農地が一杯になるまで続けるのだ。僕は半日で腰が悲鳴をあげてしまった。

 そしてその後にこの肥料土の小山を農具でならして行くのだ。広い農地を手作業で。ならし終えた後は種をまいていく。チクタン村では小麦の種をまく。そして最後には畑を耕すのだが、10年ほど前までは牛を使って耕していたのだが今はトラクターを使って耕す。

 このトラクターはズガン地区では2台しかないので村人でシェアして使うのだ。こうしてチクタン村の農作業の季節は始まる。まぶしい春の日差しに中、鶏の鳴き声とともに村人は動き出し、牛の鳴き声と呼応して農作業は続き、羊の鳴き声とともにその日の農作業を終えるのだ。

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 午後はプラタンに登る。プラタンとはチクタン村ズガン地区に沿って流れているカンジ・ナラを挟んで反対側にそびえるグランドキャニオンのような反台形型の山だ。ズガン地区よりカンジ・ナラを右に上流方面に5分ほど歩く。

 途中道を左折し登って行くとプラタンに続くつづらおりの道になっており、30分ほどで頂上にたどり着く。目の前に広がる頂上は果てしなく広い月面ようでポロやクリケットの試合が並列して何試合もできそうな広さだ。プラタンの頂上の端っこは垂直というよりも鋭角に奈落に落ち込んでいる。

 土質が砂を固めたような感じなので端っこに立つと崩れ落ちそうで非常に怖い。だがここからの景色は、まるで鳥の目にでもなったように風を感じながらの浮遊感と視界高角感が三半規管を狂わし、万有引力がまるで幻かのように人が空を飛べるという錯覚を起こさせるのに十分なものなのだ。

 目の前に広がる風の谷のチクタン村の美しさにため息がでるが、そのため息も下方からの吹き上げの風にかき消されてしまう。

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