2014年9月1日月曜日

38.チクタン村とランドセル。


チクタン村の晩夏が薫るある朝、水路に沿って忍び足で歩く二つのふわふわとした固まりがある。その一つが家の影から頭を覗かせている。その光る瞳は用心深く左右の様子をうかがい、村の洗濯場の横の石階段を駆け降り、ぴたりと止まるとまた左右を確認する。そして忍び足から駆け足になり、水路の横を駆け抜けてゆく。猫である。昔からチクタン村に住み着いている少々痩せてはい


るが抜け目のない成猫である。さてもう一つのふわふわが家の影から頭を覗かせる。キョロキョロした瞳が愛らしい子猫である。お母さんはすでに路地を駆け抜けてどこかへ行ってしまったみたいだ。子猫はか細い声でひと鳴きすると、親猫とは違う方向へ駆け出し始める。そして石階段を駆け上って羊小屋に近づいてゆく。子猫はそこでひと鳴きするも親猫の姿は見えない。子猫はまた階段を駆け降りキョロキョロとするも親猫の姿は見えない。そんな様子を石垣の向こう側から見ていたユスフは昨日の残りご飯を皿にあけ、子猫の近くにそれを置いてみる。子猫は忍び足で皿に近づき、見上げるとユスフと視線が合う。ビクッと体を震わせた子猫はきびすを返して再び羊小屋への階段を駆け上ってゆく。ユスフは皿と距離をとってみる。すると子猫はまた忍び足で注意深く皿に近づくいてゆくと、周りに誰もいない事を確認してから食事にありつく。そうとうお腹が空いていた様子で、その小さい口を懸命に動かして、ご飯を平らげてゆく。ご飯がなくなった頃合いに子猫が石垣の方を見ると、親猫が心配になったのか引き返して迎えに来ていた。親猫と子猫は尻尾を絡ませ、共に水路の向こう側のどこかのねぐらがある方向へ消えていった。

チクタン村に荷物が届いた。箱の中にはランドセルや布製のバッグがぎっしりと詰まってる。今年の冬、僕が所属するLIFE on the PLANETは愛知県岩倉市の市民センターでチクタン村の子供たちに寄付するためのランドセルや布製のカバンを募った。反響もおおきく短期間であるにもかかわらず、大きな段ボール箱二つ分のカバンの寄付が集まった。岩倉市民の皆様ご協力本当にありがとうございました。


ここチクタン村には二つの学校が寄り添うように建っていて、一つは私立の学校、一つは公立の学校だ。私立の学校はモラビアン・スクールと言って、キリスト教系の学校で、とても高いレベルの教育が受けられるが、授業料がとても高く、日本の物価に換算すると一月に一万円から二万円ほどの授業料がかかる。もう一つの学校はガバメント・ミドル・スクールで、私立の学校への授業料が払えない子供たちのほとんどは、この公立に学校に行く事となるが、教育の質はとても低く、先生の出席率も悪く、かなりの時間は自習を強いられている。日本から届いたカバンは、このガバメント・ミドル・スクールへ届ける事とする。毎年生徒は卒業していったり、モラビアン・スクールへ編入していったりして減り続けている。総生徒数は16人。カバンは35個弱送られてきて、その中にランドセルは5つ。このランドセルすべては貧しい生徒が多いこの公立の学校に届けることとした。




朝10時。ガバメント・ミドル・スクールの始まる時間に到着すると、生徒たちは全員集まっているのに先生はまだ誰も来ていない。朝10時10分。先生たちがちらほら出勤し始める。早速、先生たちと協力しながらカバンを子供たちにプレゼントする作業に入る。ランドセルをどの生徒にあげるか。この学校に来ている生徒たちは同じように貧しいので、貧しい生徒をランドセルの数だけピックアップするのは難しく、成績のトップ5までの生徒たちにランドセルを進呈することとした。ランドセルをひとつひとつ手渡ししてゆく。生徒たちの顔から笑みがこぼれる。ランドセルを受け取った生徒は、それを開けたり閉めたり、中を覗き混んだり、背を撫で上げたりして、日本製の機能美溢れるカバンにとても驚いている様子を見せていた。次に布製のカバンを残りの生徒たちに配ってゆく。生徒たちははにかみながら一人一人が一つづつカバンを受け取ってゆく。布製のカバンにも様々な形があり、生徒たちはおのおのそれを眺めては顔を緩めていた。最後にみんなで集合写真を撮る。小さな運動場に整列すると、生徒たちは受け取ったカバンを肩に掛けたり、胸の前で持ったり、背中で背負ったりしながら、にこりと笑ってハイチーズ。いい写真が撮れたようだ。僕は生徒たちに手を振って学校を後にした。





次の日の朝、僕はガバメント・ミドル・スクールの隣にあるモラビアン・スクールに向かった。朝九時、生徒たちはすでに小さなグランドに集まっていて、先生たちも全員欠けることなく集まっていた。モラビアン・スクールの朝は、毎日先生が伴奏するギターの音に合わせて、生徒たちがミッショナリーな歌声を披露する。この日も一曲歌い上げると生徒たちは各教室に分散してゆく。モラビアン・スクールの総生徒数は85名。残りのカバンの数が17個。僕は先生方と相談して一番年少のクラスにカバンを贈ることとした。生徒たちは二階の広間に集められ、僕は手渡しで生徒たちに日本から届けられた布製のカバンを渡してゆく。それらを受け取った生徒たちの顔が輝きだす。子供たちがカバンを手に取り興味深げに中を覗いたりひっくり返してみたりしている。なんとか生徒たち全員にカバンが行き渡ると記念撮影が始まる。笑って、笑って、ハイチーズ。今日もいい写真が撮れました。協力していただいた愛知県の岩倉市民の皆様、チクタン村の関係者の皆様、ガバメント・ミドル・スクールの先生方、モラビアン・スクールの先生方本当にありがとうございました。





また来年に向けての寄付を募りたいと思います。

筆箱(ペンシル・ケース)
ここでは筆箱を使わず穴が開いたカバンに直接鉛筆やらペンやらを入れて学校に持ってゆく生徒がほとんどで、学校で使うもので今一番欲しい物を尋ねたら生徒たちの多くはペンシル・ケースと答えていました。



ボールペン
このエリアにボールペンは売っているのですが、とても質が悪く買ったその場ですでに使い物にならないものが多く、使えても数日で先っぽがつぶれて使えなくなるものばかりです。二年前に日本人のドネーターの方から日本製のボールペンを寄付していただきまして、最後まで使えるボールペンがあるのだということを実感した時に、その質の高さに生徒たちはみんな驚いておりました。



ナップサック
上記に書きましたが、とても質が悪いものばかりなので是非押し入れに眠っているものがありましたら、よろしくお願い致します。



トートバック
生徒たちの間では大変実用性が高いのでみんな喜んでおりました。

ガバメント・ミドル・スクールは来年も生徒数は少なく20名前後。
モラビアン・スクールは来年は学年が増えるので生徒数が100名以上に増える予定です。



482ー0005
愛知県岩倉市下本町真光寺13ー5
LIFE on the PLANET 事務局まで。

もしくは

愛知県岩倉市市民センター内の
北インド・ラダックの子供たちへの寄付コーナーまで。

皆様是非ともご協力のほどよろしくお願い致します。


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