Saturday 16 April 2011

4.ラダックの冬景色。

 また目を覚ました。寒さでだ。たてつけの悪い窓から外を見ると、今日もレーの街は雪化粧をまとってている。今日のカルギル行きは雪のため中止となった。雪中の峠超えは危険なので避けたほうがいいという判断だ。

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 僕は昼食を食べ終えるとシャンティ・ストゥーパに向かう事にした。レーの街の左手に広がるのどかな風景の中広がるゲストハウス地区をそぞろ歩く。しばらくこの地区を迷いながら散策する。両側を干しレンガ塀に囲まれた緩やかな坂道を一歩一歩登って行く。

 僕の少し前をラダックの伝統的衣装を身にまとったおばあさんが歩いている。僕は暇なのでそのおばあさんの後をつける事にした。そのおばあさんは途中で現れたマニ車を左周りに三回まわした。

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 からんからんからん
 僕もマニ車を三回まわす。
 かわんからんからん

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 おばあさんは今度は途中で現れた三連ストゥーパを左回りにまわる。僕も三連ストゥーパを左周りにまわる。そんな事を繰り返しているうちにおばあさんは脇道にそれていなくなってしまった。しばらく歩くと目の前に岩山の固まりが見えてきた。

 僕は考えた。さてどうしようか。岩山を凝視してみるとつづら折りの階段が頂上まで続いている。この頂上がシャンティ・ストゥーパだろうか。とにかく僕は登ってみる事にした。一段一段と登って行く、階段は雪が積もっていて滑り易くなっているので、慎重に登る。

 まだ細かいさらさらとした雪がしんしんと降っている。途中で休みながら、冷たくなった手をこすりながら登って行く。吐く息はさらに白くなっていく。頭上で鳴き声がした。

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 キウキウキウキウ
 見上げると一羽の小さな鳥が岩場から飛び立ってくるくる回っている。
 キウキウキウキウ

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 僕はその鳴き声に励まされたように一歩一歩階段を登って行く。かなり登ったようだが、金比羅さんとか山形の山寺のほうがずっと階段は長かったように感じた。七百段ほど登っただろうか、シャンティ・ストゥーパが見えてきた。白いシャンティ・スゥーパはラダックの白い雪景色によく映えていた。

 シャンティ・ストゥーパから見えるレーの街の景色はまた格別だ。正面の奥にナムギャル・ツェモとレー・パレスが降りしきる雪の間に微かに見える。そして眼下に広がる耕作地は点在する林の中に有り、干しレンガ塀に囲まれたその様はラダックの象徴的な風景を作っている。

 そしてはるか彼方にはラダックレンジの真っ白な山脈がその勇姿を僕の新たな記憶に強く刻んでいた。僕はこの景色を存分に堪能した後またつづら折りの階段を下りて行く。途中で老夫婦とすれ違う。その夫婦のおばあさんは僕がシャンティ・ストゥーパに行く途中ずっと後をつけていたおばあさんだった。

 その老夫婦は日課として、レーの街に点在する仏教的神秘物を詣でているのだ。そしてその締めとして夫婦でシャンティ・ストゥーパに登るのだそうだ。僕は後ろを振り返った。

 その先に見えたものはおばあさんがおじいさんの腰の紐を後ろから掴んで慎重に落ちないように階段を一歩一歩登って行くその後ろ姿だった。嗚呼良き人生かな。

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 僕は次にレー・パレスに向かう。オールド・レーの迷路の道を歩きながら尻尾を振って近づいて来る野犬を”フィン”と叫び右手で追い払いつつ、岩山にへばりついている急な傾斜の道のようなものを僕は登って行く。レー・パレスは近くから見る限り去年の洪水の被害はまったく受けてないようだ。

 目視良しというところだ。それからナムギャル・ツェモに続く道のようなものを僕は登ったいく。しばらく登り後ろを振り返ると、ここからも美しいレーの街を伺うことができる。干しレンガで作られた家々がレー・パレスを頂点にしてひしめき合っている。

 家と家の間の道は迷路のように街全体に広がっていて、その先には時々仏教的建造物やマスジドが点在している。少し寒くなってきた。岩山を降りようと思う。今日のラダックはどうやら春が頭を引っ込めたみたいだ。その首根っこをつかんで春の巣穴から引っこ抜いてやりたい気分だった。

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