チクタン側の峠を抜けて、波打つヒマラヤの峰々を通り抜け、最後の峠も抜けようとする所であっと息を飲む。界下から風が吹き上がり、その深い谷の下の方に緑の宝石が開けて来た。
「コクショー村だ」
なめし革色のヒマラヤの山々に囲まれたその美しい緑の村は、隠れるようにひっそりとそこに佇んでいた。村に中には小さなゴンパも見え、まるでここは時間が止まって現代ラダックからも取り残されたかのように感じられる。コクショーの峠から急斜面にあるつづら折りの道...
Tuesday, 10 July 2012
Monday, 9 July 2012
19.チクタン村の話 その8。
今日はチクタン村に嬉しいお客さんが来る。日本人の方がこの谷に入ってくるのだ。到着日程だけしか聞いていなかったので、到着時間は分からず、朝よりチクタン村の橋のふもとでバスかタクシーが到着するのをのんびりと待つ事にした。近くのカンジ・ナラの川の流れは勢いを増して激しい音をたてている。ヒマラヤの夏の日差しは眩しく日陰で待つ事のする。学校の昼休みに子供たちがおのおの家に戻ってくる。そしてその途中で子供たちが声をかけてくる。
「何してるの?」...
Sunday, 8 July 2012
18.チクタン村の話 その7。
黄昏に夜が忍び寄ってくる頃、毎夜チクタン村にエンジンの音がこだまする。
・・・ドルゥン・ドルゥン・ドル・ド・ド・ド・ド
すると柔らかな闇と星に包まれていたチクタン村にポツポツと光が灯る。夜8時、チクタン村の小さな小さなディーゼル発電所から家々に電気が運ばれてくる。発電所の近い家から順番に火が灯るのでクリスマスのイルミネーションのように光は動きそして走る。午後8時から午後11時までの3時間電気が供給される。たまに燃料が尽きて火が灯らな...
Saturday, 7 July 2012
17.チクタン村の話 その6。
モンスーンの季節の合間に顔を覗かせた良心的な太陽は、再び流れてくる雲をその強い日差しで追い払いながら、僕たちの様子を追いかけていた。見上げると鋭く天に向っている岩山の先っちょのところに、チクタン城が太陽を背に北の国の山百合のように咲いていた。足を一歩岩山の裾野に踏み出すと、山肌の表面を覆っている薄い岩肌が剥がれ落ちてくる。チクタン城に会いにいく方法は二つあり、一つは城下に広がるカルドゥン村側からマスジドの脇を通り、城の正面の岩肌の小...
Friday, 6 July 2012
16.チクタン村の話 その5。
どこからかフォーク・ソングの調べが、のどかな朝に聞こえてくる。チュルングサ(チクタン村の中を流れる小川)方面がなにやら賑やかだ。僕はさっそく左に動物たちの小屋そして右に野菜畑を見ながらその小径をチュルングサに急ぐ。石垣の上や積まれた大木の上やチュルングサのを囲む少し広くなっている土地の淵には人だかりが出来ており、その中心には荷台にハイキング・グッズを詰め込んで来たトラックとその荷台から吐き出された大勢の子供たちが円を作りラダッキ・ダ...
Thursday, 5 July 2012
15.チクタン村の話 その4。
「にわとりは?」
「コッカラ・コーン」
「じゃ猫は?」
「ミャオース」
「犬」
「ウオッ ウオッ」
「カシャンブルーは?」
「カシャ・カシャ・カシャ」
「じゃ牛は?」
「バーオ」
「山羊は?」
「マー」
「羊はなんて鳴くの?」
「バァ・バァ・バァ」
...
Wednesday, 4 July 2012
14.チクタン村の話 その3。
今日はチクタン村のお盆の日だ。早朝より村人たちはお墓参りに行く。お墓は高台の緑の農地が一望できるとこに作られている場合が多い。お墓の上には色とりどりの花が散りばめられており、ヒマラヤの山に眠るご先祖様の周りに集まり、歌を歌い、特別な食事をし、そして語らうのだ。日本のお盆とほとんど同じで、先祖を敬い、今を戒め、思いを未来に馳せる。しかしお墓の姿は日本の火葬と違い、イスラム教では土葬が主だ。世界で火葬が取り入れられている主な宗教は仏教と...
Tuesday, 3 July 2012
13.チクタン村の話 その2。
今日朝も村中に鳴り響く結婚式の始まりの音楽で目を覚ます。昨日今日と長い宴は今日も続く。昔は結婚式を一週間続けたという話も聞く。昨今ではそうもいかず、三日または二日と短くなっている。朝のチャイは気持ちよく喉の乾きを潤し、朝の食事は程よく空腹を満たし、朝のチクタン村の風景は心を満たしてくれる。僕の部屋の窓からは、プラタンと呼ばれる台形の巨大で美しい山塊が見られる。プラタンは朝は陽が背から射すので腹は影になっているが、朝靄に出会った時の幽...
Monday, 2 July 2012
12.チクタン村の話 その1。
朝6時頃、寝室で静かな音がしたのでゆっくりと目を覚ますと、枕元にはんなりと湯気が上がっている一杯のチャイとブレッドが置いてあるのを発見する。チクタン村の朝はカルギルと比べるとずいぶん寒い。目覚ましの暖かいチャイはありがたいと思うが、きっと僕は二度寝に入るだろう。そして二度目に目を覚ましたときは朝の7時半になっていた。朝から村内でなにやらにぎやかな音楽が流れている。今日はチクタン村の住人の結婚式らしい。6月、7月はチクタン・エリア内で...
Sunday, 1 July 2012
11.そしてチクタン村へ。
あるカルギルのよく鳥が鳴いて、よく空気が澄んで、よく晴れた日の朝、メモリーカードの中の数千枚の写真を消失してしまい、カルギル中の店をあたふたと駆け巡り、なんとか全ての写真のエスケープに成功した後、僕は再びチクタン村へ向かうこととなった。メインバザールのラルチョークをスル・リバーに向かい、プエン村に渡す橋の手前に位置しているタクシー乗り場から出発した。カルギル市街は日中交通規制が行われており、バルー方面からバザールへの道は通行可能で、...
