Saturday, 20 August 2011

7.ケッタラーマ寺のつれづれなるままに 其の一。

 スリランカのお寺では毎週土曜日の夜になると、ボーディプージャの法話会がある。スリランカ仏教では花であるとか心であるとかをお釈迦様に捧げる日がある。これはお釈迦様の教えを忍ぶため会なのだ。寺の回りに夏の夜の静かな帳がおり始めた頃、檀家の方々がお堂に集まり始める。  ろうそくを灯したり、線香を焚いたりして、おのおのがおのおのの方法で釈迦仏に祈りを捧げている。お堂の中で祈りを捧げるもの、お堂の外の小さなパコーダの前に座り祈りを捧げるも...

Friday, 19 August 2011

6.クルネーガラ・ロックとサマーディ石仏とペラヘラ祭と。

 僕とダマはクルネーガラ・ロックへ登る。クルネーガラ・ロックは地底から突如生えてきたような岩の固まりが空を埋め尽くすかの如く巨大な一枚岩の山を作っている。低地より見上げると岩山のてっぺんに白い何かが鎮座しているのが見える。それはクルネーガラの街を空から見守っているお釈迦様だ。  岩山の縁に手すりがついており、それに沿って僕たちは白い釈迦像に向って登っていく。天気が不安定な中、雨の心配をしつつ僕たちは登っていく。その岩山の斜面は滑り...

Thursday, 18 August 2011

5.アヌラーダプラ。

 ダマの生家より西方へバスで1時間半ほど行ったところにアヌラーダプラという名の仏教の遺跡が散在している聖地がある。バスを降りると聖地は人と熱気で溢れかえっていた。そこからスリーマハー菩提樹の入り口までの30分は幅広の一本の道が続いている。  その道は一つの川を跨いでいて、ふと視線を右に移すと欄干の奥で沐浴をしているお坊さんの姿が見えた。スリーマハー菩提樹がある門の手前のすべての店は蓮の花を売っている。僕たちは店を一軒一軒吟味して回...

Monday, 15 August 2011

4.ミーウェラワのお寺。

 朝ダマとミーウェラワのお寺に向かう。ジャングルの中のそのお寺は掃き清められて清潔であり、檀家の村人のたゆまぬ努力により丁寧に維持されていた。寺は村の一番奥にあり、淡い黄色と白を中心とした優しい寺の色使いは見る人を柔和な気持ちにさせ安心を誘う。  寺の門をくぐると檀家の女性が顔を左にちょこんと倒して「アーユボーワン」と僕に云う。日本でいうとろのこんにちはとかさようならなどの挨拶に相当する言葉だ。僕も「アーユボーワン」で返す。島の青...

Sunday, 14 August 2011

3.ジャングルの中の村、ミーウェラワ。

 僕と僧侶のダマはクルネーガラのバスターミナルから古バスに乗り換え北へ向った。果てしなく続くココナッツの木やバナナの木の並木道をバスに揺られてひたすら進む。陽気な音楽がバスの中にかかっている。僕もスリランカ・レゲエのリズムを口ずさみながら車窓の風景を眺めている。  沿道にときおり見える店はあくまでも南国風で、瓦やバナナの葉で作られた屋根が常夏の日差しを受けて輝いている。遠くに大きな湖が見える。その湖から飛び立つ白い鳥の群れは青い空...

Saturday, 13 August 2011

2.小さなジャングルの中のお寺~ケッタラーマ・エンシャント・テンプル。

   青ペンキをひっくり返した空が地平線まで続き、その淵を入道雲が綿菓子のように沸き立ち、横一直線に伸びる飛行機雲がその青ペンキをきれいに二分していた。クルネーガラに向うバス内は、スリランカとは思えない多彩な音楽が花を開かせていた。  スリランカ・レゲエ。スリランカ・カリプソ。スリランカ・サンバ。スリランカ・サルサ。スリランカ・ハワイアン。スリランカ・ボサノバ。南国の音楽をすべて網羅したような選曲はここがスリランカ、中南米、南米、...

Wednesday, 10 August 2011

1.スリランカと言う名の楽園。

 コロンボの空港に到着したのは、とっぷりと日は暮れて、すでに日付が変わろうとしていた頃だった。夜は温かくも海からの風が心地よく、僕はタクシーに乗リ込むと窓から流れ込むその優しい風を感じながらコロンボの街中に向った。コロンボに続く道路はすばらしくきれいで、インドから来た僕にはそれは衝撃だった。  車が道路を普通に走れるのだ。インドの道路は日本の道路のおおよそ20パーセントから30パーセントの出来で完成だと見なされる。もちろん設計段階...

Tuesday, 9 August 2011

2.爛熟のデリー。

   パハール・ガンジより細い辻に入り、崩れかけた雑居ビル二階と三階の間にチックの部屋はある。雑居ビルの階段の踊り場にはカシミール・ツーリスト・カンパニーのポスターが張られている。しかしこの先にはそんな会社などない。階段の行き止まりの扉を開けると6畳ほどの小さな部屋がある。  その部屋には壁一面、床一面にヒンディーの神様の小さな彫刻が飾られている。神様たちはいつもこの部屋で取引されるきな臭い話の一部始終をここで見聞きしているのだ。...
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